東京地方裁判所 昭和40年(ワ)1333号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕二 そこで、本件実用新案の構成について検討すると、本件実用新案が原告主張の(イ)(ロ)(ハ)の構造を要件として含んでいることは、当事者間に争いがない。
被告はこのほか被告の製作方法をも要件の一つとするものであると主張しているけれども、実用新案は物品の形状、構造または組合せを対象とするものであつて、この形状、構造または組合せの構成を達成するための製作方法自体はその構成の一部となるものではないから、被告の主張は採用できない。
そして、<証拠>によると、本件実用新案においては板金に形成された陥没部分が穂の根節部分を強固に圧着挾持しているので、、それは穂が脱落するのを防止する作用効果を果しており、また、板金の底辺近くにある透孔の個所では前記圧着によつてふくらみ傾向のある穂が板金の表面上に露出してひつかかつているので、それもまた穂の脱落防止の作用効果を挙げていることが認められる。
三 <中略>被告が製造している二種の帯は、いずれも柄と板金と穂とより成るものであり、<中略>被告が現に製造している二種の帯の板金には、陥没部分にはさまれて柄の装着される円筒部が形成されているが、円筒部の下端は陥没部分の下端とほぼ一線をなしており、円筒部に柄を装着するとその柄の下端の位置は陥没部分の下端に達している。一方、穂には枝朶毛を用い、それを二つに折り曲げ、折り曲げ部分を金槌で叩いて形を整え、別にあらかじめ箱形に作つた板金の下方開口部に穂の折曲部分を挿入する。穂の折曲部分の厚さは板金の開口部から無理なく容易に挿入しうる程度で、開口部の厚さにほぼ等しく、板金に挿入されると、あらかじめ取り付けられている前記柄の下端に突き当つてそれより上部の板金陥没部分には入り込まず、陥没部分の下端の線にとどまつている。
以上のとおり、被告が現に製造している箒においては、穂の折曲部分は板金の陥没部分に入り込んでいないので、穂の折曲部分が板金陥没部分によつて圧着挾持されておらず、したがつて当該陥没部分が本件実用新案の企図する脱落防止の作用効果を挙げていないことが明らかである。
もつとも、板金の一部の切除されている検甲第二号証をみると、この箒の穂の折曲部分は幾らか陥没部分に入り込んでいるけれども、入り込んでいる部分は僅かであつて、圧着挾持による効果を奏する程度に至つているかどうか明らかでない。そればかりでなく、この箒の穂が極めて緊密にたばねられているところをみると、その板金の一部を切除するため穂を板金から抜いて板金を切除し、再び組み立てたものであると思われ、果して被告が製造したままの状態を示しているかどうか明らかではないから、同号証は原告の主張を支持するに足りない。
つぎに、前掲各証拠によると、被告製造の箒は釘で穂を板金に打ちとめており、穂は僅かにふくらんではいるが、透孔の個所から板金上に露出していないことが認められる。したがつて、穂が透孔にひつかかつて脱落が防止されるという作用効果も生じていないことが明らかである。
してみれば、被告が現に製造販売している二種類の箒はいずれも本件実用新案の技術的範囲に属しないものといわなければならない。(古関敏正 吉井参也 小酒 礼)